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子供に恵まれなかったご両親が、子宝の湯と名高い、当時は混浴だった栃尾又温泉に通って授かった子だと聞いて育った山崎さん。連載の依頼内容を聞き、「ご縁なんだな」と思って引き受けたのが温泉エッセイスト誕生のきっかけです。 「最初のお仕事が、旅館や施設紹介だけでなく、混浴温泉だったからこそ、今まで続けてこられたんです。4年半の連載を続けるうちに、物書きとして『温泉ほど人の幸せな表情を表現できる場所はない』と強く感じるようになりました」。 年代も性別も違う人たちが一緒に温泉に入り、笑顔が溢れる、なごやかなひととき。職業も肩書も関係なく、旅の一期一会を楽しむ瞬間。そんな空間に惹かれ、いつしか温泉の専門家のような存在になっていたそうです。 |
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以前の混浴温泉は年配の方が多かったようですが、現在は若い方も増えつつあります。けれども、最初は緊張したり、抵抗がある方も多いでしょう。どうすれば、混浴温泉で自然や人との出会いを満喫できるのでしょうか?今でも入る前は緊張するという山崎さんは、至極簡単なコミュニケーション方法をオススメしています。 「『こんにちは』という一言が、通行手形になるのです。混浴温泉に入っている方は当然、温泉が好きなんですよね。ほとんどの方が、おしゃべりを楽しみたいと思っています。ですから、脱衣所や湯船に入ったとき、既に話の輪ができていたとしても、『こんにちは』『どちらからいらしたんですか?』と挨拶すれば、気持ちよく仲間に入れてもらえます。勇気を出して最初の一歩を乗り越えれば、忘れられない温泉浴の醍醐味が味わえますよ」。 |
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「脱衣所から温泉へ出入りするところは視線を外してあげてください。そして、なごやかな雰囲気を壊さないように『こんにちは』と挨拶をすることも大事です。湯船の中では相手と自分との間に、人二人分ぐらいのスペースを空けましょう。適度な距離感があれば、親密に話しやすい雰囲気ができます。写真を撮る際は、自分以外の人も裸で入っていることを忘れず、周囲に一声かけてください。バスタオルを体に巻いて入る場合は、その旨をお断りしましょう」。 山崎さんが語るマナーは、どれも周囲への気配りに満ちていながら、決して難しいことではありません。最初の挨拶をきっかけに、裸の人間同士が言葉を交わせば話も弾むもの。地元の方しか知らないわき水の場所、オススメの店、食べ物などを教えてもらい、ガイドブックには乗っていない旅を満喫しましょう。 |
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長年、温泉に入り続けてきた山崎さんは非常に若々しく可愛らしい、健康的な印象です。これも温泉効果なのでしょうか。 「実体験からお話できるのは、温泉は体を温めるということです。水道水よりも温泉の方が体が温まりやすく、冷めにくいといわれています。実際、私は手足が冷えて眠れなくなるほどのひどい冷え性なのですが、温泉に入ると体が温まり、夜もよく眠れます。 冷えは万病の元ですから、それを改善するという意味で、温泉は絶大な効果があると思います。また、温泉へ出掛けるとなれば気分的にも開放されてリラックスし、転地療養効果もあるでしょうね」。 温泉はいいことずくめのようですが、入浴前には忘れてならない注意点も。 「入浴は想像以上に体力を消費することを忘れてはいけません。湯当たりしないためには、必ず十分な水分と適度なカロリー摂取を心がけてください。空腹で入るのも、満腹で入るのもオススメできません。ですから、温泉宿でお茶とお饅頭を出すことは理にかなっているんですよ。先人の知恵なのでしょうね。お酒、特にビールは脱水症状を起こしやすくするので、飲んでからの入浴は控えましょう」。 |
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「東南アジアやヨーロッパなど、現在までに20ヶ国ほどの温泉を回りました。どの国にもそれぞれの宗教や文化、社会背景があるので、入浴方法も全く違います。例えば、インドネシアのジャワ島にはイスラム教徒の方が多いのですが、イスラム教徒の女性は肌を隠さなければなりませんよね。ですから、温泉に入るときも女性はGパンにTシャツのままなんです。ヨーロッパには昔から湯治場がありますが、温泉に入るより温泉水を飲む場合も多いですね。また、ヨーロッパの方は温泉をプールのように捉えているので、水着で入り、泳ぐような感覚です。それらと比べてみると、やはり、日本のように裸でリラックスして入るというのは珍しいのではないでしょうか」 |
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情緒ある日本家屋に積もった雪を見ながら、見知らぬ者同士が裸のまま、湯気の出る熱いお湯にゆったりと浸かる。それは日本独特の風景のようです。山崎さんは海外での取材を通して、逆に日本の温泉の良さを認識し、海外へ広めたいと思うように。アクティブな活動を続けた結果、国交省から「YOKOSO! JAPAN大使」に任命され、現在は海外へ日本の魅力を紹介する大使としても活躍中です。 「外国の方は、同性同士であっても裸でお風呂に入ることに非常に抵抗があるとおっしゃいます。そこで、日本の銭湯や温泉の歴史などを物語として筋道立てて説明し、一度入ってごらんなさい、素晴らしいものですから、と説得して入れるのです。評判は悪くないですよ。むしろ、一旦入ってしまえば、みなさん銭湯が好きになって帰国されます」。 「海外での取材や大使活動などを通じて発見したのは、温泉は単に入って気持ちいいというだけでなく、日本人の精神性を反映させたものなのだということです。それを日本の方にも、もっと認識して欲しいですね」。 |
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かつての温泉は社員旅行などで出掛ける人気スポットであり、飲み食い騒ぐ歓楽地でもありました。日常のルールを忘れて楽しむ非日常の空間だったのです。 「時代の流れもあり、ニーズがあるのはよくわかりますが、温泉というものがきれいなものしか受け入れないようになってしまうと、少し寂しい気もします。歴史をひもとけば、かつての温泉地というのは歓楽地であり、結婚式などを行うハレの場でもあったのです。今よりも包容力があり、様々な人や欲望を受け入れてくれるものだったのです。太宰治だって心中するために熱海へ行ったわけですよ。そういう人間としてのドロドロしたものを全て排除してしまっていいのかな、という気持ちはあります。意外に知られていませんが、そういった温泉の歴史を遡るのも楽しいですよ」。 |
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最後に、オススメの入浴方法、自分に合う温泉の選び方を伝授して頂きました。 「大地から沸き上がる温泉に裸で入ることは、地球と話をすることだと思っています。土地が温泉を生んでいるのですから、できるだけ地元のものを食べて、近辺のわき水を飲んで温泉に入れば、しっかり相手と対話しているようなものですよね。それは肉体面だけでなく、精神面にもすごくいい効果があるのではないでしょうか」。 |
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