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達人 野崎洋光さん
料理に大切なことは、
素材を知ること、
自分の舌で味を覚えること
食材を活かした体にやさしい日本料理に定評がある「分とく山」の総料理長・野崎洋光さん。日本の食文化についても造詣が深く、特に、米、水、しょう油など和食の基本食材には人一倍のこだわりをもった料理人です。今回、野崎さんにお正月料理やお雑煮について、いろいろな話をお聞きしてみました。
お雑煮は「雑に煮る」具だくさんの料理
─まず、野崎さんが子どもの頃に食べたお雑煮はどのようなものでしたか。
野崎私の故郷である福島では、しょう油とカツオだしの汁に、お餅、ネギ、鶏肉と、とてもシンプルなお雑煮でした。ただ昔は鶏肉ではなく、キジだったり、ツルだったという話も聞いています。
─野崎さんにとって、お雑煮とはどんな料理だと思いますか。
野崎お雑煮というのは、「雑に煮る」と書くわけですから、具だくさんの煮物であって、とにかく、どんな具材を使おうが、どんな味付けにしてもいい料理なんだと思います。だから、各地のお雑煮をみると中味はバラバラなのでしょう。
 具材には土地ごとの名産、地場産業に即したものが入っていますね。海が近ければ魚介類、たとえば九州ではアゴ(トビウオ)やサバだったり、北の方ではサケやイクラを入れていたり。また山が近ければ、イモやキノコなど山の幸を入れています。お雑煮は郷土料理といってもいいんじゃないですかね。
 あとは、お正月ですから、紅白だとか縁起にちなんだものが入ります。
祝いの料理はプラス思考の言葉遊び
─おせち料理もすべて縁起に関わった食材ですね。
野崎はい、エビならば腰が曲がるまで、黒豆はマメに働く、コンブは喜ぶ、数の子は子だくさんで子孫繁栄など、ようするに言葉遊びですね。祝いの席での料理は、すべてプラス思考に考えられています。
 くだものの「梨」がありますが、「なし」に通じるので「有りの実」と言い換えたりします。でも漢字をよく見てください、梨という漢字は「利」と「木」からなります。「利(利益)をうむ木」ともいえませんか? このようにプラスに考えてみてもおもしろいですよね。
お雑煮は主食、汁、煮物とバランスがいい
─それではお雑煮を作る際のポイントなどがあれば教えていただきたいのですが。
野崎地方によって違うのでしょうが、一般的な作り方をお話しします。まず、汁はカツオとコンブだしに、薄口しょう油を20分の1、みりんを0.5ぐらいの割合にします。お雑「煮」というぐらいですから、「煮物」と同じくみりんを少し入れます。
 お餅は焼いた方が香ばしさや食感もあっていいんじゃないでしょうか。昔は固くなったという理由で焼いていましたが、いまはどちらでもいいと思います。
 具材に鶏や鴨肉を入れるのであれば、お餅がデンプンでヌルっとしていますから、肉もくずうちした方がいいですね。
─くずうちとは何でしょうか。
野崎鶏や鴨肉を片栗粉でまぶし、1回湯通しすることです。これ以外にも鶏肉の場合は塩をふって20〜30分ぐらいそのままにして、湯にくぐらせてから入れると、すっきりとした食感になります。
 後の具材は野菜ですね。サトイモやシイタケ、青菜など。最後に香の物としてユズとか入れるといいのではないでしょうか。どうせなら今住んでいるところで穫れた野菜などがいいですね。昔から「身土不二(しんどふじ)」といい、地元の旬の食品や伝統食は身体に良いと言われています。
 それから、お雑煮は主食、汁物、野菜、肉など、すべての要素がそろってます。こんなにバランスのいい料理はないかもしれませんね。
だしを取るのに鍋は使いません
─読者のなかには、だしの取り方について聞いてみたいという声も多いのですが。
野崎皆さん、だしの取り方を難しいと勘違いしているようですが、実は簡単なんです。用意する道具はボールだけです。ボールの中に80〜90度ぐらいのお湯を1リットル入れたとすると、カツオ節を10g、コンブ7センチ角を入れて、だいたい1分〜3分。あとは濾せばできあがり。これだけで充分なだしが取れるんです。わざわざ鍋に火をつけることもありません。
─こんなに簡単に、だしが取れるとは驚きました。まるでお茶を入れるような感じですね。
野崎いま3分ぐらいでしたが、鶏肉など動物性タンパク質を入れるのであれば、だしを取る時間は1分で充分。肉、魚など素材からも、だしが出るので、1分以上だと味が濃くなり過ぎてしまいます。だしというのは、どんなものからでも取れるのです。極端な話ですが豆腐からだって、だしは取れます。
 あと京都のお雑煮は白みそを使っていますが、白みその場合はだしを使わなくてもいいんです。ただし市販されている白みそだと人工的に甘くされているのでダメですが、麹の甘みがしっかりとした本物は、みそ自体がだしになるんです。試しに、いまのだし汁でこの白みそをといたものと、普通のお湯で白みそをといたものを飲み比べてみてください。
自分の舌で覚えた素材の味が大切
─だし汁でといたものは、味が濃く感じます。お湯でといたものは、白みその旨味がそのまま出ていておいしいです。
野崎そうです。だしと白みそでは味がきつくなり過ぎるんです。料理本では、みそはだしでとくものと書かれていますが、それがすべての正解ではありません。本に書いてある手順をそのまま実践しないでください。実際に自分の舌で味わいながら料理を覚えることが大切です。そのためには素材のことを覚えてください。いまの日本人は、お米、酒、しょう油など日本の食材のことを知らない人が多すぎます。日本人が1番日本のことを知らないのでは。
 料理人にしても、自分はイタリアンだから、中華だから、和食は関係ないと言うかもしれませんが、もし海外で修行中、日本人なんだから何か日本料理を作ってみろと言われて、ごはんすら炊けなかったら恥ずかしいじゃないですか。日本人なら、日本の食材について熟知し、その食材の本当の味を知っていれば、料理方法はわかるんじゃないでしょうか。
─食材のことを知ることが、料理上達の秘訣ですね。
野崎素材を知ること、それから自分の舌で味を覚えることが重要です。昔から家庭に伝わる伝統や、味を大切にしてください。
─お忙しいなか、素敵なお話をありがとうございました。
野崎洋光 のざき ひろみつ
1953年福島県生まれ。
「東京グランドホテル」「八芳園」を経て「とく山」の料理長に。1989年に「分とく山」を開店し、現在は都内5店舗の総料理長。伝統的な和食の技法をふまえつつ、体によい素材を使った独自の料理に定評がある。著書に『美味しい方程式』などがある。
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